
●牧野愛博記者プロフィール●
1965年生まれ。91年朝日新聞入社。
瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金客員研究員、ソウル支局長などを経て、2021年4 月より朝日新聞外交専門記者(朝鮮半島・日米関係担当)。
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2026年2月
増え続ける都市の独居世帯
2月20日に文春新書「金正恩 崖っぷちの独裁 王朝を脅かす5つの危機」を発表する。脱稿した時、文藝春秋社の編集者の方との間で「今、売れている本」が話題になった。編集者曰く、「何と言っても、高齢社会を扱った本」だという。福祉や財テク、終活はもちろん、高齢者と安全保障、高齢者と外交など、「そんなテーマも」という本まで売れているという。
厚労行政に詳しい知人によれば、2035年には85歳以上の方の人口が1千万人を超えるという。高齢化に伴う問題は様々だが、都市部を中心に最も頭を痛めているのが「高齢者の独居世帯の増加」だそうだ。東京では2030年代後半になると、両親と子供が暮らす世帯が2割強なのに対し、単身者世帯が全体の4割以上を占めるようになる。高齢者の増加が一段落しても、2040年ごろまで都市部の高齢者の独居世帯は増え続けるという。
厚労省が2024年に「死後8日以上経ってから発見された孤独・孤立死」の実態を調査したところ、全国で約2万2千件に上った。うち、東京が約3800件、大阪が約2000件だったという。すべてが高齢者というわけではないが、独居生活を営む高齢者をどうやってケアするかは、喫緊の課題になっている。
これに対し、日本の社会システム自体が非常に立ち遅れているという。知人は「介護保険が導入されたのは四半世紀も前の話だ。そのころは家族介護が主流で、介護保険はその穴を埋めるという発想だった。これだけ独居世帯が多くなっている現状で、既存の制度では対応しきれない」と語る。
問題は介護だけではない。最近よく話題になる、「小さなお葬式」いわゆる、高額な葬儀費用に対する不満やトラブルもその一つだ。知人は「日本の場合、死んだ後の法律が不十分すぎる」と話す。現状では、厚労省が管轄する「墓地、埋葬等に関する法律」と、法務省・警察が担当する刑法のなかの「死体遺棄罪を含む死体損壊等罪」くらいしかない。知人は「遺体の埋葬は非常に公益性が高い行為なのに、葬儀会社が埋葬する行為を管理する法律がない。だから、いろいろなトラブルが発生する」と語る。
日本の場合、高齢化に合わせて社会の制度設計を変えることに失敗した。今からでもできるところは手をつけるべきだが、どこまで設計変更が間に合うのかはわからない。
知人は「とりあえず、やるべき方法のひとつ」として、こんなアイデアを紹介した。「ある年齢以上の高齢者を対象に、スマートウォッチを配布する。地域医療や家族などとリンクさせて、血圧や脈拍などに異常が生じた場合にすぐに気づくことができる体制をつくればいい」と言う。「あとは、それぞれの負担額に応じて、詳細な健康データの変化に応じて、地域医療からサービスを受けられるようにすることもできるだろう」とも話す。
ただ、日本は健康保険証のマイナンバー化にしても、「国家による個人情報の統制」を心配する声などから、全面移行までに結構な時間がかかった。また、「負担額に応じたサービス」についても、「金持ちばかり優遇するのはおかしい」という声も出てきそうだ。もっとも、こういう局面でドラスティックに割り切れない日本人の「優しさ」が、世界のデジタル化の流れに乗り遅れるという事態を招いたことも事実と言える。
外交や安全保障も心配だが、自分たちの足元の問題も心配だらけだ。今回の総選挙の結果は、この心配を解消することにつながっただろうか。
朝日新聞社 牧野愛博(よしひろ)





















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